TMTとは

 TMTは1938年にPartingtonらによって開発されたArmy Individual Test Batteryを構成する課題の一つであった.従来は軍用のテストバッテリーとして開発されたが,その後,Halstead-Reitan Neuropsychological Batteryに追加された.米国では,古くから神経心理学検査の一つとして広く普及しており,日本の臨床現場でも近年普及しつつある.TMTはパートA,Bの2パートから構成される.検査では,被験者にパートA,Bが印刷されたシートとペンが用意され,検査の指示,計測を行う検査者によってガイダンスが行われ実施される.
 パートAではシート上に配置された「1」~「25」の数字が描かれた円を順番(1-2-3-4…)に線で結び,その合計時間をスコアとする.パートBでは「1」~「13」の数字と「A」~「L」のアルファベット(日本語版では「あ」~「し」のひらがな)が描かれた円を交互にかつ順番(1-A-2-B-3…)に結び,合計時間をスコアとする.
 TMTのスコアは年齢との相関が強いことが示されており,計測した合計時間を年代ごとに標準化された値と比較することで注意機能の低下をスクリーニングすることができる.標準化の値は国や教育の有無等で様々な種類が提案されており,統一された基準は存在しない.また,TMTでは数字や文字の認識に加え,注意の持続性,転換性,ワーキングメモリ等の能力が必要とされ,脳機能障害の評価方法においても妥当性や信頼性が報告されている.

<参考文献>
[1] War Department Adjutant General’s Office, “Army Individual Test Battery,” 1944.

[2] T. N. Tombaugh, “Trail Making Test A and B: Normative data stratified by age and education,” Archives of Clinical Neuropsychology,, 2004.

[3] Llinàs-Reglà, J., Vilalta-Franch, J., López-Pousa, S., Calvó-Perxas, L., Torrents Rodas, D., & Garre-Olmo, J. (2017). The Trail Making Test: Association with other neuropsychological measures and normative values for adults aged 55 years and older from a Spanish-speaking population-based sample. Assessment, 24(2), 183-196.

[4]岩瀬弘明, 村田伸, 日沖義治, 北尾沙友里, 中村純子, 中井良哉, … & 窓場勝之. (2013). Trail Making Test と Mini-Mental State Examination との関連―簡便な認知機能低下の識別方法の検討―. ヘルスプロモーション理学療法研究, 3(1), 1-4.

d-TMTアプリ

 従来の紙面版TMTの盤面を維持しiPad上に実装することで,紙面版では取得できないデータの取得を行い,時間計測やエラー判定などの人手が必要な作業を全て自動化することを目的として開発を行なった.アプリはswift UIを用いて開発を行った.紙面版TMTがA4サイズの紙に印刷されることから,それと同等のサイズであるiPad Pro 12.9 inch での動作を想定してアプリを実装した.また,紙面版と同様に手書きでTMTを実施するため,Apple Pencil (第2世代)を使用できるようにした.

アプリ紹介

メニュー画面でユーザを登録後(図1)、テストを実施します(図2)。

      図1 メニュー画面
      図2 テスト実施画面
      図3 テスト終了画面
      図4 結果表示画面

◼️実績

関連論文

・殿村隆太, 松田雅弘, 大保武慶, 万治淳史, & 久保田直行. (2019). 自動車運転再開への新たな指標に関する注意機能評価支援システム. 日本交通科学学会誌, 18(2), 3-12.

・武田隆宏. (2021). タブレット端末を利用したスマート TMT の開発. 第一工業大学研究報告, (第 33), 47-50.

・向井陽斗,目片幸二郎,寄田明宏, 青村茂,久保田直行, タブレット版 TMT アプリ実施結果の統計データ分析, 第5回 継続学習と知能の創発研究会 講演論文集, pp.14-15, 大阪, June 9, 2023.

・向井 陽斗, 目片 幸二郎, 寄田 明宏, 青村 茂, 大保 武慶, 久保田 直行, スマートTMT における合計遂行時間と認知時間の相関関係の解明, 第31回インテリジェント・システム・シンポジウム(FANシンポジウム), 講演論文集, Fr-A2-3, 福岡, September 7-8, 2023.

提携先

・東京、兵庫の病院、クリニック
・順心神戸病院 脳障害患者 10例程
・山口クリニック
 1000例以上の検査データを収集 
・三五医院(内科クリニック)
 14名の患者に適用。評価結果をさらに長谷川式や他の方式と詳細に比較。

◼️連絡先

 代表者 寄田 明宏  
 dtmt.tmu*gmail.com  「*」を「@」に変更してください

◼️特許の番号

 特願2023-100849 

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