半側空間無視を対象とした認知アーキテクチャの構築
高次脳機能障害の一つである半側空間無視(以下,USN)を対象とした認知モデリングに関する研究を行っています.USNは片側空間に注意を向けることができなくなる疾患であり,主に右半球損傷後の高次脳機能障害の一つとして,約4割の頻度で発症するといわれています.USNの検査方法として、線分抹消試験や模写試験などの机上検査,行動検査を組み合わせたBehavioural Inattention Test行動検査がありますが,紙面上での無視が主な評価対象となることから,空間的な無視の評価が難しいことが課題となっています.
本研究では,没入型ヘッドマウントディスプレイやマーカレスモーションキャプチャを適用し、三次元VR空間上での無視領域評価が可能なシステム開発を行っています.また,患者と環境との相互作用が,頭頸部や体幹の姿勢変化,眼球運動などによって生成されることを考えると、これらを計測、分析、評価することで、USN患者特有の空間認知特性の把握につながると考えられます.そのため,本研究では,生態心理学の知見に基づき,患者の認知過程を計算論的にモデル化するとともに,患者の空間認知をシミュレート可能な認知アーキテクチャの構築を目的としています.
キーワード
構造化学習,認知モデリング,認知アーキテクチャ,半側空間無視,知覚-行為循環
参考文献
- 関口 拓郎, 大保 武慶, 久保田 直行, 松田 雅弘, 半側空間無視のための没入型VRシステムを用いたマルチモーダルセンシング, システム制御情報学会論文誌, Vol. 37,No. 4, pp. 106-108, 2024(研究速報).
- Takuro Sekiguchi, Takenori Obo, Naoyuki Kubota, and Tadamitsu Matsuda, LSTM-based Motion Trajectory Prediction in a Perceptual-Action Cycle System, In Proceedings of the 2023 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC 2023), Hyatt Maui, Hawaii, USA, pp. 2820-2825, October 1-4, 2023.
- 大保 武慶, 関口 拓郎, 共創的認知リハビリテーションにおける知覚-行為循環に基づく認知モデリング, 第31回インテリジェント・システム・シンポジウム(FANシンポジウム), 講演論文集, Fr-C4-2, 福岡, September 7-8, 2023.
- 関口 拓郎, 大保 武慶, 久保田 直行, 松田 雅弘, トポロジカルマップを用いた半側空間無視における視覚的注意のモデリング, 第39回ファジィシステムシンポジウム, 講演論文集, pp. 545-550, 軽井沢, September 5-7, 2023.
- 関口 拓郎, 大保 武慶, 久保田直行, 半側空間無視評価のための没入型VRシステムを用いたマルチモーダルセンシング, 第67回システム制御情報学会研究発表講演会, 講演論文集, 京都, May 17-19, 2023.
- Takenori Obo and Naoyuki Kubota, Topological Structured Learning for Assessment of Unilateral Spatial Neglect, In Proceedings of IEEE Joint 22nd International Symposium on Computational Intelligence and Informatics and 8th International Conference on Recent Achievements in Mechatronics, Automation, Computer Science and Robotics (CINTI-MACRo 2022), Budapest, Hungary, November 21-22, 2022.
- 大保 武慶, 没入型ヘッドマウントディスプレイを用いた半側空間無視評価システムの構築, 第38回ファジィシステムシンポジウム(FSS2022),講演論文集, pp. 95-100, 東京, September 14-16, 2022.